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火砕流は空気のクッションの上を滑る [火山]


火砕流があれほど早く遠くまで流れ下るのは、エアホッケーの原理が働いている
ということが分かった。

奔流の温度は約700℃、スピードは時速80キロを超える。

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活火山から約100キロ圏内には現在、約8億人の人々が暮らしており
命を奪う火砕流の猛スピードの理屈などはコミュニティ支援のために生かされる

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2019/04/10
命を奪う火砕流、猛スピードの原因を解明、最新研究
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エアホッケーのように空気層の上を滑っていた

火山が噴火した際に、多くの死者が出る原因の一つとなっているのが火砕流だ。
高熱のガスや灰、岩屑などが混ざり合って斜面を流れ下る現象で、その奔流の温度は
約700℃、スピードは時速80キロを超える。

予測することも逃げることも難しい現象だが、火山に近いコミュニティを守るうえで、
火砕流の仕組みを理解することはきわめて重要だ。たとえば、火砕流は想定以上に遠く
まで達することがよくあるが、その原理はこれまでわかっていなかった。

この疑問への答えを提示する新たな研究成果が、4月8日付けで学術誌『Nature Geoscie
nce』に発表された。


空気の層で摩擦を回避

論文によると、火砕流があれほど速く、あれほど遠くまで移動できるのは、それらが
空気のクッションの上を滑っていくためだという。

適度に細かい灰やガスなどがぎゅっと凝縮された火砕流は、なめらかな空気の土台に乗
って前進する。この空気は、火砕流が斜面を下ったり、水平な地面を進んだりするとき
の摩擦を減らし、また十分な勢いがあれば、斜面を登ることも可能にする。

実際の火砕流を分析するのは困難だし、極めて危険だ。そこで研究チームは、ニュージ
ーランドで2000年前に起こった大噴火による堆積物を大量に用いて、屋内で再現実験を
行うことにした。

彼らは堆積物を熱してから12メートル弱の滑り台を滑らせ、小規模ではあるが驚くほど
現実に近い火砕流を作り出した。

さらにコンピューター・シミュレーションを用いて、この実験結果から実際の規模の
火砕流を再現した。すると、得られたデータは、前述の摩擦を回避するメカニズムが噴
火の最中にも働いていることを示していた。

「実験と数値モデルを組み合わせることで、複雑な自然のプロセスをより深く理解でき
るという好例です」と、今回の研究には参加していない米国立自然史博物館の実験火山
学者、ベン・アンドリューズ氏は語る。


エアホッケーの原理

今回の論文の著者であるニュージーランド、マッセー大学のガート・ルーブ氏らのチーム
は、火砕流を安全に研究するため「火砕流噴火大規模実験(PELE)」と呼ばれる装置を
開発。実験をハイスピード撮影すれば、滑りをもたらす空気層の発達など、火砕流の活
動を詳細に観察することが可能になる。

火砕流の内部には空気が存在する。火砕流の底にある空気が地面とぶつかると、空気が
もつエネルギーの一部が運動エネルギーに変化し、圧力(気圧)が低下する。すると、
火砕流の底に気圧の低いゾーンができ、その上に気圧の高いゾーンができる。

この圧力差によって、火砕流内部から底への空気の流れができ、潤滑クッションができ
あがる。そこには別の原理も働いているが、このクッションは、エアホッケーのテーブ
ルから送り出された空気が、その上を走るパックの摩擦を減らすのと同じ効果を発揮し
ている。

この空気のクッションによって「大きな違いが生まれます」と、ルーブ氏は言う。
なぜなら、さまざまなものが混ざりあった火砕流内部には、非常に高い摩擦力があるか
らだ。潤滑の役割をはたす空気がなければ、「火砕流内部はトラックに積んだ砂程度の
可動性しかないでしょう」

ルーブ氏はまた、火砕流ではこの空気による潤滑のメカニズムが発生するが、火砕サー
ジと呼ばれるガスの多い現象では、この仕組みは働かないと指摘する。


火砕流の「指紋」を探して

今回の論文は、火砕流のモデルに組み入れるべき重要なデータを提供していると、英ハ
ル大学の火山学者、レベッカ・ウィリアムズ氏は述べている。

実験室で火砕流を再現することは、最近よく行われている。「実験では、実際の火砕流の
活動のごくわずかな断片を垣間見るだけです。しかし、そうした断片の一つひとつは、
あの恐ろしい火砕流についての知識を構築するうえで重要なのです」

カナダ、ブリティッシュコロンビア大学のジョハン・ギルクリスト氏は、今回の研究を
評価しつつ、これまでにも火砕流がなぜあれほど遠くまで到達するのかを説明する有力
な研究があると指摘する。

また同氏は、研究チームのコンピューターモデルによる推測は簡略化されたものだとも
述べている。今回の新たなシミュレーションは最先端のものではあるが、これを最も大
規模で、最も破壊力の強い火砕流に対して、どこまで適用できるかはまだわからない。

研究の次のステップは、まずモデルの精度を上げること、そして同じく重要なのは、現
場に戻ってみることだろう。

空気のクッションの上を滑る火砕流から途中でこぼれていった岩屑の中に、特徴的な
“指紋”が残っている可能性があるからだ。火山学者がそうした痕跡を探せれば、火砕
流が空気の上を滑るという説を補強できると、ギルクリスト氏は言う。

謎は完全に解明されたわけではないが、今回の研究が「重要な前進」であることは間違
いないと、スミソニアン研究所のグローバル火山活動計画の火山学者、ジャニーン・ク
リップナー氏は述べている。

活火山から約100キロ圏内には現在、約8億人の人々が暮らしており、「火砕流はこうし
た地域の人々の命を奪う大きな要因となります」と、クリップナー氏は言う。「わたし
たちが行う研究はすべて、コミュニティ支援のために生かされます」

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